2013-07-25

『「オウム真理教事件」完全解読』竹岡俊樹






この本、なんと、
Amazonマーケットプレイスでは
6000円近い値がついています(2013年7月現在)。
もともとは1500円くらい。

大ヒットしたベストセラー「バカの壁」で紹介されており、
興味をもったものの、衝撃の価格に諦めていたのですが
玉川図書館の書庫にありました。



本書の目的は、オウム真理教事件について我々が抱いた不快感を言葉で説明すること、すなわちこの事件を徹底的に読み解くことにある。彼らはなにを否定し、なにを求めたのか?この事件の全貌を「文化分析」し、隠れた、さらに大きな問題を開示する。



この本の著者さんは、考古学者。
その考古学のやり方にのっとった論文です。

過去の文献などをひもといて、
まず事実を収集し、
それから自身の考察をおこなう。

感心するのは、その文献などの情報量。
オウム事件が表面化してから
さまざまな文献が出ましたが、それらもありながら、
オウムが活動期間中に出した機関紙などもソースにしている。
そのため大変リアリティがあります。

オウムの犯罪行為を描くのではなく、
なぜ巨大化したか、
なぜ誰もとめなかったか、
なぜ信者はついていったか、
そもそもなぜ入信したのか。

そういった、オウムがああなるまでを
解き明かそうとしている本です。

いまでこそオウム事件を知っている我々からすると
「なんであんな宗教団体に入って
 しかも信じてたんだろう」と思うでしょうが、
その「なぜ」が垣間見えます。


まずは「修行の追体験」。
麻原は、修行をしたときにみる
トリップ現象を明文化している。
これが信者のこころをひきつけたと。
「この人のいう通りだ」となると。

しかもその修行は、後期になると
自家製(!)LSDを使い、
より容易に、かつ根深くマインドコントロールをする。


そして麻原への帰依。信者同士で
麻原とのつながりの強さを競わせる。
そのためみな、気に入られようと必死になる。


そういった、オウムの巧妙さが
淡々と紹介されています。


オウム真理教というのは
麻原という怪物的カリスマ教祖と
日本社会がかかえていた病理が
混在して生まれたもの。

だからこそ、過去のものにしてはいけない。
それがよく分かる一冊。


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