人禍 1958~1962―餓死者2000万人の狂気 丁 抒 森 幹夫 学陽書房 1991-10 売り上げランキング : 858656 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「大躍進政策」って、ご存じですか?
これは1958~1960年にかけて
中国で毛沢東が主導した農業・工業の増産計画。
「文革」こと文化大革命の前の政策です。
Wikipediaにも載っています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%BA%8D%E9%80%B2%E6%94%BF%E7%AD%96
タイトルにもある「餓死者2000万人」のように、
最終的には大量の餓死者を出し経済を停滞させた大失敗政策。
この大躍進政策がいかにして起こって、
最悪な結果に終わったか、それを文献等から推察しまとめた一冊。
いやはや、毛沢東の独裁者ぶり、そして狡猾さがよく分かります。
そもそも毛沢東は「精神は物質に変わる」との信条を
このころには持ち合わせており、
しかも自らが中国を建国したプライド・自信もあいまって
自分の考えが絶対であり、まわりもイエスマンしかいなくなる。
もしたてついたら迫害されて終わり。
絶対的な権力者でありながらも皆の意見は聞く。
しかしそれはポーズにすぎない、と。
中にはこの政策の問題点を指摘した重臣もいたけれど
結局迫害され、権力の中枢から追いやられる、と。
読んでいるうちにどんどん憂鬱になってきます。
作者は中国人ながらアメリカに留学し、
もうそのままそちらで大学教授となり住み続けている方。
なので毛沢東へのヨイショはほぼなく
基本的に中立的なスタンスで書いています。
一番こころがうたれたのは、飢餓のさま。
著者は中国にいるときに「思想改造」のため
強制労働所で働いた経験があるらしく、
そちらで一緒になった人たちにインタビューしています。
自分以外の家族が飢え死にしたり、
全員でなくても親兄弟が死んだり。
とにかく悲惨な話が淡々と紹介されており、へこむ。
この政策後、文化大革命が起きた中国。
国としてぼろぼろになったであろうに、
今の躍進を見ると、その底力のすごさと
一党独裁体制のメリットを感じざるを得ません。