寺山修司に愛された女優---演劇実験室◎天井棧敷の名華・新高けい子伝 山田 勝仁 河出書房新社 2010-10-15 売り上げランキング : 193037 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
今年は、寺山修司が亡くなって30年。
それもあって、テレビ等でも取り上げられることが
増えつつあると思います。
私ごとですが、一時期
寺山修司にいたく心酔し、傾倒。
本も乱読、映画もほぼ全部観賞。
ある時期が来たら、急に飽きたような感覚になり、
本はほとんど手離してしまいましたが、
それでもなお寺山の演劇と映画だけは、好きであり続けました。
古今東西のアングラをつめあわせたような
あのごった煮的世界、大好きです。
そんな寺山が率いた劇団・演劇実験室◎天井棧敷で、
ずっとずっと第一線の主演女優でありつづけた
新高けい子。
このかた、寺山の死後、すっぱりと引退。
いまにいたるまで、せいぜいイベントに出るくらいで、
表舞台からは姿を消しました。
寺山の死後、天井棧敷はしたものの
その片腕だったJ・A・シーザーが
「演劇実験室◎万有引力」を立ち上げ
天井棧敷の所属役者の大半はそちらに移る中、
潔いほどに身をひいた。
なぜ、寺山の死とともに引退したのか。
それがずっと知りたかった。
それが分かった本でした。
著者は演劇ジャーナリストとして
長年活躍されている方、
取材力がすばらしい。
新高けい子が、どのようにして生まれ育ち、
そしてなぜ女優になったか、
そういった半生について詳しく解説し、
なおかつ当時の社会情勢もからめられており
自分のような「当時」を知らない人間にも読みやすい。
当時の空気感まで、感じられるというか。
寺山の演劇が、いかにアバンギャルドで、
しかも若者に支持されていたのか、
深く知ることができます。
ときどき出てくる新高けい子の写真の
美しさに驚き。これは舞台でも華になりますね。