蜘蛛女のキス (集英社文庫) | |
マヌエル・プイグ 野谷 文昭 集英社 2011-05-20 売り上げランキング : 59194 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ブエノスアイレスの刑務所の監房で同室になった二人、同性愛者のモリーナと革命家バレンティンは映画のストーリーについて語りあうことで夜を過ごしていた。主義主張あらゆる面で正反対の二人だったが、やがてお互いを理解しあい、それぞれが内に秘めていた孤独を分かちあうようになる。両者の心は急速に近づくが―。モリーナの言葉が読む者を濃密な空気に満ちた世界へ誘う。
アルゼンチンの作家の小説。
以前読んだ「ブエノスアイレス事件」がとてもよく、
さらに「ラテンアメリカ十大小説」でも取り上げられて
いたのもあって読んでみました。
これはいい。
小説ならではの世界。
対話型の小説です。
登場人物は、4人。
しかもそのうち2人はたまにしか出てこない、
刑務所の「所長」と「看守」。
基本、囚人二人の会話です。
ゲイのモリーナ。
革命家のバレンティン。
その二人の会話が、物語の9割。
しかも大部分は、モリーナが
バレンティンに、自分が好きな映画のストーリーを話す。
そんな小説。
展開も、遅い。
しかし、なぜか、
この引き込まれる感じ。
Amazonの解説文に
モリーナの言葉が読む者を濃密な空気に満ちた世界へ誘う
とあり、まさにその通り。
結構分厚いうえ
展開が遅いのに
続きが気になる。
映画のストーリーにはさまれる
登場人物の告白が、物語性をぐっと高めています。
ラテンアメリカの文学特有の
幻覚的・狂気的な感じは薄いものの、
ミクロな世界に流れる濃ゆい時間とでもいうのか、
小説ならではの世界に引き込まれます。