羆嵐 (新潮文庫)
北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆の出現! 日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月に起った。冬眠の時期を逸した羆が、わずか2日間に6人の男女を殺害したのである。鮮血に染まる雪、羆を潜める闇、人骨を齧る不気味な音……。自然の猛威の前で、なす術のない人間たちと、ただ一人沈着に羆と対決する老練な猟師の姿を浮彫りにする、ドキュメンタリー長編。
三毛別羆事件。
Wikipediaにも載っている、有名な事件です。
三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)とは(中略)羆(ヒグマ)が数度にわたり民家を襲い、開拓民7名が死亡、3名が重傷を負った。
という大変ヘビーな災害。
これをドキュメンタリータッチで描いた小説です。
グロ描写はほとんどありません、
そりゃそうだドキュメンタリーだし
熊に食われているところなんて見られないはず。
見てたらきっと巻き添えくって殺されてたし。
それよりか比重がおかれているのは
熊におびえる人々の態度。
いかにヒトが無力か。
そしておびえた心をもつのか。
そっちのほうが多く描かれています。
質実剛健という言葉がぴったりの
ちょっと古めかしさを感じるけど読みやすい文章で
つらつらとつづられる、熊とヒトのたたかい。
しかしヒトはほぼ無力。
そこに立ち向かうのはマタギ、つまり熊殺しのプロ。
徹頭徹尾淡々とした描写が続きます。
死体の描写も淡々としたもの。
だからこそ情景が頭に浮かんでくる。
良書です。
物語としておもしろい。
わりと薄い(中編って言っていいくらい)ので読みやすいですよ。