蠅の王 (集英社文庫) | |
ウィリアム・ゴールディング 平井正穂 集英社 2009-06-26 売り上げランキング : 245623 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
未来における大戦のさなか、イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が攻撃をうけ、南太平洋の孤島に不時着した。大人のいない世界で、彼らは隊長を選び、平和な秩序だった生活を送るが、しだいに、心に巣食う獣性にめざめ、激しい内部対立から殺伐で陰惨な闘争へと駆りたてられてゆく…。少年漂流物語の形式をとりながら、人間のあり方を鋭く追究した問題作。
人間性善説/性悪説という考えがある。
人間が生まれもった性質が善なのか悪なのか。
いずれが正しいのか、決して分からないだろうに。
この書はまさに性悪説にもとづいたような、物語。
極限状態においこまれた少年たちが
生き延びるためにさまざまな策をとるが、
「内ゲバ」、つまり内部抗争が続くばかりで
事態は悪化しつづけていく。
しかし皮肉にも、物語としては
その内ゲバがひどくなっていくあたりから、実におもしろい。
また人間の描写が、嫌になるくらいリアル。
理論派もいれば、行動派もおり、
それらはもちろん対立する。
対立することで、本来の目的も見失う。
そういった、生きていくうえで経験する
社会の泥のようなものが、
ここに描かれている。
マンガでは「ドラゴンヘッド」や「漂流教室」でも
描かれているような、
極限状態の狂気と集団の対立。
こちらは文字のみなので、これらマンガよりも
伝わりづらいかもしれないが、
その分、グロテスクなものが苦手な人でも読めるのでは。
不満を挙げるならそのラストか。
あまりの唐突感、
そしてデウス・エクス・マキナ(どんでん返し、超展開)的な。