2009-11-05

建築家・谷口吉生先生の講演会に行ってきた




先日玉川こども図書館で開かれた建築家谷口吉生先生の講演会に行ってきました。
非常にぐっと来るコメントぞろいの講演会でした。
谷口先生ご自身、あまりこういった講演はなさらないそうで
非常に貴重な場だったといっていいでしょう。

当日の会場は満員。
そして思った以上に若い子が多いです。学生さんかな?


まず山出保市長があいさつ。
なんと20分!あいさつなのに。
しかし、谷口先生とお父様で金沢出身で同じく建築家の谷口吉郎さんと
それにかかわるお話が中心で非常に興味深い内容でした。


その後谷口先生が講演されました。
タイトルは「私と建築と金沢」。
この日は「私と金沢と建築の順で話します」と前フリされ
お話がスタートしました。
大変やわらかいものごしの紳士といった感じの語り口調でした。
スーツでびしっときめ、背筋がピンと伸びた姿が印象的。


まず谷口吉生ご自身のお話。
実は、父が偉大すぎるので建築家になるつもりはなく
大学では船について学び、造船会社に入社が内定していたそう。
しかしお父様のご友人で建築家の清家清先生から、
「建築は楽しいよ!」といわれ、思いなおしてアメリカに留学し建築を学ばれたそう。
後年、お父様が亡くなってから、
清家先生に建築を勧めてくださったことを感謝とともに伝えたところ
「実はあなたのお父さんに頼まれてたんだ」とお答えになったそうです。
いまとなっては、ほんとかどうか分かりませんがおもしろい話。

次が金沢の話で、東京生まれの先生は小1~3のときに金沢に疎開され
十一屋小学校に通われていたそうです。
谷口家の実家は寺町にあるそうで、現存しているとのこと。
おじいさまは片町で九谷焼の店を営まれていたそうです。

そして建築の話。メイン。
谷口先生が建築で大切とお考えなのは
①素材 ②光 ③プロポーション 続いて人の導線 だそうです。
また、建築は建てたら終わりでなく何十年も残るものなので
周辺の環境との調和を第一に考えるそうです。
そのため建築の前に何十回と現地に足を運ばれるそう。
いかなる場合でも、テーマは「そこにしか存在しない建築」。
引き合いに出していたのは金沢21世紀美術館で、
「あれも大変すばらしい建物ですけどあれが丸の内にあってもいいですよね」と
お話していたのが印象的でした。

また、玉川図書館についてもご解説してくださいました。
玉川図書館の外壁は鉄(コールテン鋼というらしい)を素材に選ばれていますが
これはとなりの近世資料館のレンガと対比させたもの。
レンガは土、そして鉄も自然素材。
それぞれが風化・劣化していくのを意識したと。
鉄のさびも計算のうちだそうです。

そして、MoMAや豊田市美術館、土門拳記念館などのご自身の作品を
スライドとともに解説。
どれもこれも、周辺環境をしっかり考えたうえで設計されていました。

最後に質疑応答。
前々からおうかがいしたかったことをぶつけました。
「コンペと受注が決定しているお仕事の感覚の違いはありますか?」と。
そしたら驚きのお答え。
実はコンペは受けないようにしてるんです」と。
えっ?MoMAはコンペだったのに…と思っていると
「MoMAは最初(コンペの話を)お断りしようと思っていた。
でも、当時友人らとご飯を食べたときに、コンペの話になり
友人らは落ちてばっかり、『お前も一回落ちてみろ』とけしかけられたんです」と。
名誉とかでなく、ノリだったのか!!
しかも受注している…
またもうひとつコンペで受注した京都の国立博物館百年記念館は
「作品(設計図?モデル?)の提出がいらず、書類と面接だけだったので
応募してみたら幸い受かったんです」と。
コンペより、指名してもらったほうがうれしいとのことでした。

やはり谷口先生は決して饒舌すぎない作品主義の建築家、
という印象です。
しかしつくり出す作品の数々は超一流。
その一流の建築の裏には、人知れない苦労と
思考の数々があったんだと知ることができました。

大変有意義な講演会でした。
谷口先生は、これから石川県で金沢市の鈴木大拙館、
加賀の片山津温泉の総湯を手がけるご予定。
完成したらぜひ見に行きます。


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